はりぼうのほほん日記

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映画、ファッション、グルメが好きな大学4年生!基本日記と、めんどくさがり向けライフハックです。

此岸と彼岸の境/『ジェイルバードー塀の中の生存競争ー』の感想

ネットフリックスの新作、刑務所内の女性たち(と、少し男性たち)を描いたリアリティ・シリーズ『ジェイルバードー塀の中の生存競争』をイッキ見しました。
(どうでもいいけど、此岸って一発で変換できないのね)

事実は小説より奇なり

「事実は小説より奇なり」…って程ではありませんが、『ジェイルバード』はノンフィクションな分、同じく刑務所内の女性たちを描いた『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』よりも真に迫ってくるものが多く、より生々しく感じることができたので私は気に入りました。『オレンジ』のほうはさすがにすこしドラマティックすぎるなあという部分が目に着いたんですが(看守の描き方だとか、受刑者の奇行だとか)、『ジェイルバード』は、もちろんカメラは入っているので本当の自然体ではなかったり少しの脚色はあるのかもしれませんが、そこまでわざとらしいなと感じる部分はなく受刑者たちの恋愛模様や人間関係、ときには(というか多くの)喧嘩や看守との関係が自然に描かれていたように思います。さらに、”刑務所”という環境は私たちにとってそれだけで非日常ですから、「現実のなかで本当にこういう場所があって、こういうことがある。こういう罪を犯した人たちがいる」という見せ方のほうが、下品な言い方をすると、興味をそそられます。

”私たち”と”彼ら”の違い

タイトルでは此岸と彼岸なんて大げさな書き方をしましたが、実際”こっち側”と”あっち側”を隔てるものって何なんでしょうか。
この『ジェイルバード』には実際に殺人や強盗、詐欺などの事件を起こして服役している、あるいは刑の確定待ちの囚人たちがたくさん出演しています。
多くの場合、「殺人なんてするのは異常者で、われわれとは違う。もともと狂人なんだ」と考えることが多いと思いますし、そう思っていないとなんだか怖くてやっていけません。
ですがこの作品を観てると、私たちと彼らの違いなんて、実はそんなにないんじゃないかと考えます。
強いて言うなら、環境が違った。
たまたま人より裕福だった、たまたま友達がイイやつばかりだった、たまたまひどい目にあわなかった……。
『オレンジ~』でもそうでしたが、『ジェイルバード』に出てくる囚人には、大学も通って奨学金をもらう優等生だったのに、ドラッグをしたことをきっかけに売人になり捕まってしまう女性や、冗談で「後ろの奴から盗みをしよう」なんて話をしたのをきっかけに財布をとったことをきっかけに盗みがクセになってしまう女性など、さまざまなバックグラウンドと犯罪歴をもつ人々が登場します(もちろん、根っからのワルみたいなやつもいなくはないですが)。
自分のしてしまったことを後悔したり、「どうしてこんなことになってしまったのかわからない」と困惑したり、「ここを出たら大学に入りなおしてまっとうに生きたい」と話したり、一途な恋愛をしたりする彼女たちを見ていると、私は自分と彼女たちの間にある壁のようなものは実はまったくないんじゃないかと思いました。
ふとしたところに細い線が書いてあって、それに気が付くか気が付かずに超えてしまうか、その程度の違いなんじゃないか。
一人の看守は、ひどい目にあい、それでもポジティブに考えることができたから、「同じような人たちを、私の手で捕まえたい。彼女たちも、私のような人間が警察だった方が、いいはずだから」と看守になることを決意しました。
塀の中の彼女たちも純粋に人を愛し、罪を後悔する普通の人間です。
しかも特に私は、大きなくくりで考えたら、恋人を裏切った、罪をおかした人間です。
私たちは誰でも、状況や精神状態次第で”彼女たち”になり得るのです。
そして、その時にはいくら反省しても、変わったと言い張っても、罪がなくなることはないのです。

人を愛し続けることのむずかしさ

『ジェイルバード』には様々なカップルが登場します。
外に妻や夫がいる人、刑務所内で恋愛を楽しむ人、結婚する人。
一途に塀の外の妻を思い続け、「これからは彼女のためにまっとうに生きていくよ」と刑務所を出ていく人もいますが、電話やわずかな面会時間しか会えない恋人のことを思い続けるというのはとても難しいことです。
これは刑務所内でパートナーになった場合も同じ。
例えば片方はもうすぐ刑期が満了なのに、もう片方はあと10年も残っていたら?
好きになって付き合い始めた男が、実は自分の知っている女とも少し前に付き合っていたら?
それでも、愛して信じ続けることができるでしょうか。
普通に人生を生きていても、誰かを一途に思い続けることはとても難しいことなのに……。
実際に様々な結末がありましたし、まだ解決していない彼らがどういう結末を迎えるかはわかりませんが、人を愛する幸せと、むずかしさのようなものを身に染みて感じました。

まとめ

私はわりと反社会的な傾向をもつ人間で、周囲のおかげでとどまれている部分があると日ごろから考えていることもあり、最初は「私の”身近”にある、でも私のいる場所とは全然違う世界」を見たいといういわば怖いもの見たさで見始めた『ジェイルバード』。
実際に彼女たちの姿を見ていると、考えさせられることがたくさんありました。
そんなに深刻に考えなくても、ドラマありファイトありのこの作品自体とても面白く見ることができると思うので、『オレンジ~』が楽しかった人も、女子の世界をのぞいてみたい人も(笑)、ぜひ気軽に見てみてください。現在6話分公開されていますが、まだまだ続きそうです。

www.netflix.com


**おまけ
個人的に「モンスター」と「ドーラ」という受刑者がお気に入りです。モンスターさん、人体改造めっちゃしててスプリットタンだしタトゥーだらけで超怖い見た目なんですが、見かけによらず友情に厚かったり、恋人に対するピュアな気持ちがあったり、なんだか垣間見えるかわいらしさがあって魅力的です。あと、好みは分かれると思いますがルックスも結構美人に思います。彼女はまだまだ観測できますから今後も楽しみです。ドーラ君は男子なんですが、単純に顔がタイプです(笑)。二股したり特定の人と付き合う気はないだとかおっしゃったり、クソ男なんですが、最後には仮釈放され、刑務所で出会った同じく仮釈放の女子と真剣な関係を築くことを決めます。21歳だし、これからどんどんそうやって大人になっていくんだろうな……。幸せになれると良いね。

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ドーラ。